研究概要 |
本研究の目標はネコ外側膝状体のスライス標本にパッチクランプ法を適用し、外側膝状体の中継細胞におけるNa,K,Caイオンチャンネルの性質を明らかにし、次いでそれらのチャンネルを通る電流がアセチルコリン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの局所投与によってどのように影響されのるかを調べるところにある。その予備的実験として本年度はin vitro網膜組織におけるCaチャネルの同定とそのGABAおよびアセチルコリンによる修飾機序について研究を行なった。孵卵3日目の鶏胚より網膜神経層を剥離摘出し、カルシウム蛍光指示薬(Fura2-AM)をロードした後、ピペットにより各種の試験溶液を投与し、直径50μmのスポット上にて蛍光測光を行ない、F340と380の蛍光強度の比から細胞内Ca濃度を経時的に算出した。その結果、高K外液で細胞膜を脱分極させると持続的な細胞内Ca濃度の上昇がみられ、種々の薬理学的検討からL型Caチャンネルを介するものであると同定された。次の外液へのGABAの投与によっても細胞内Ca濃度の上昇が生じ、この応答もL型Caチャンネルを介する反応であることがわかった。さらに細胞内記録と薬理学的検討の結果、GABA_A受容体を介したC1イオンの流出に伴う脱分極によって膜電位依存性Caチャネルが開いた結果と解釈された。次に外液へのアセチルコリンの投与によっても細胞内Ca濃度の著明な増加が確認されたが、この場合にはムスカリン受容体から細胞内のIP3を介したCa貯蔵からの遊離であることがわかった。今後同様の方法を用いて外側膝状体のスライス標本にて研究を進める計画である。
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