サル一次視覚野(V1)ハイパーカラム間の情報統合様式を解析するための最初のステップとして、V1ニューロンの受容野特性およびその形成メカニズムを検討した。今年度は、特にII/III層のブロッブ(チトクローム酸化酵素染色で斑点状に濃染される領域)細胞の色選択性の形成メカニズムについて、麻酔、非動化したニホンザルV1の単一ニューロン活重の記録および皮質内抑制の担い手であるGABAの受容体拮抗薬であるbicuculline methiodide(BMI)のイオン泳重投与により脱抑性の手法を用いて検討した。 組織学的に同定したブロッブニューロンのうち21個が特定の色に選択的な応答を示した。15個については受容野の中心部分を等輝度色スポット光のオン、オフ残り6個は等輝度色スリットの往復運動を刺激としてそれに対する反応を検討した。その結果、BMIイオン泳動投与による脱抑制によって、全ての細胞でコントロール時には観察されなかった不適当色刺激に対する反応が出現した。また多くの場合、脱抑制中の反応は、コントロール時における最適色刺激に対する反応が最大であり、最適色との波長の差が大きくなるにつれて反応は小さくなった。また運動刺激に対して明瞭な色選択最反応を示して6個のニューロンにおいても、BMI投与による脱抑制は不適当色刺激に対する反応を出現させた。これらの結果は、これまで色選択性細胞の受容野中心のオン反応またはオフ反応がそれぞれ1種類の錐体入力によってできているとする考えが支配的であったのに対し、実際には、特定の錐体メカニズムにバイアスをもちながらも3種類全ての錐体入力がブロッブの色細胞に収束していること、またGABA受容体を介する皮質内抑性はブロッブニューロンの活動性を調節して、最適色に対する選択性を強化していることを示唆する。
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