腹足類の中枢ニューロンは中枢神経節群の表層に並んでいるために実体顕微鏡下で同定可能といった特徴を持つ。本研究は実験動物として2種の淡水カタツムリ(LymnaeaとHelisoma)を用いた。カタツムリニューロンの組識培養実験室および生理実験セットをセットアップし、可塑性促進因子、シナプス接続の特異性さらに生体で構成した機能的神経回路の動特性の機序解明のための実験モデル開発を目指した。実体顕微鏡下で動物から中枢神経節リングを取り出し、シリコンゴム底のデイッシュに中枢神経節リングをインセクトピンを用いて張り付け、ピンセットとタングステンナイフを用いて神経節の外膜を切り開いた。先端をファイヤーポリッシュしたガラスマイクロピペットとマイクロメータシリンジを用いて同定したニューロンを単離吸引し、条件処理した培養液(CM)を入れた培養皿に細胞を置いた。培養液は50%L-15倍地ゲンタマイシン20ug/mlを用いた(DM)。CMはDMにカタツムリの「脳」を2個/mlの割合で3日間漬けてニューロンの成長を促すようにした囲現在同定もしくは未同定のニューロンの単離培養に成功しており、同定したニューロンの間のシナプス接続形成がいくつか測定された。しかしまだリズム発生回路の様な機能的神経回路の構成はまだ成功にいたっていない。今回は単電極電位固定法(SEVC)により単離培養ニューロンの電位依存性膜電流測定をおこなった。培養したニューロンのSEVC記録によりナトリュウム電流主体と思われる電位依存性内向き電流とそれに続く外向き電流が記録できた。また培養ニューロンのタイムラプスビデオ記録を行い、1時間で数十um伸張し、また後退するfilopodiaの運動が観測できた。以上実験実施計画に対して一部だけの成果しか得られていないが、今後生体外が構築されたシナプス接続の生理解析を中心としてこれからの進展が期待される。
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