研究概要 |
一般には四股の運動と眼球運動はその制御機構が異なると考えられ、全く別の研究グループによって別々に研究されてきた。しかし、小脳半球部には四股の随意運動を制御する領域と共随意的な眼球運動を制御する領域がある。私達は同じ小脳半球部にある上記の二つの領域でプルキン工細胞の発射活動を比較した。昨年度は眼球運動の場合にも四股の運動の場合と同様に運動開始前に発射活動の変化が始まることから、随意眼球運動の始動に小脳半球部が一定の役割を果たしていることを報告した。 本年度は運動の方向とプルキンエ細胞の活動について比較した。四股の運動の時には、反対方向の運動すなわち屈曲・伸展の時にプルキンエ細胞の発射活動が非相反的に変化することを我々は既に報告したが、四股の運動の場合、関与する筋が多い為に幾つかの解釈が可能である。その意味では眼球運動の場合、筋が限定されているので決定的な結論を得ることができる。そこで、正中から上下左右に20度の眼球運動を行うようにサルを訓練し、小脳半球後葉の眼球運動領域からプルキンエ細胞の発射活動を記録してみたら、観察した55個の全てのプルキンエ細胞の発射活動がどの方向への運動の時にも同じパターンの変化をすることがわかった。筋活動のように反対方向の運動の時にも逆の変化をする相反性変化はプルキンエ細胞では全く見られなかった。上記の結果から、四股の運動と同様に、眼球運動の場合にも、小脳半球部は随意運動の方向の制御には重要な役割を果たしていないと結論できる。 以上のように、小脳半球部について見ると、四股の運動と眼球運動に伴うニューロンの活動特性には共通する性質がいくつかあることがわかった。これらの結果を論文にまとめた(Mano et al,1993,In press)。
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