サルに同時に提示された2つの図形の形、または、スポットの色が、同じか杏かを半断させる課題を行せて、下側頭皮質からニューロン活動を記録した。また、単独刺激に対する応答を調べる目的で一方の刺激を500ミリ秒先行させる課題もおこなった。ニューロンがある刺激対に対して選択的に応答する場合、たとえ一方の刺激が抑制性であっても、2つの異なる刺激に対する応答が、適刺激を2つ同時に提示した場合よりも増大することがしばしば観察された。一方、刺激の提示時間をずらした課題においては、遅れて提示された適刺激に対する応答は、先行して提示されている刺激がそれと異なる刺激、すなわち、不適刺激の場合の方が応答が一般に増大する傾向を示した。すなわち、継時的に提示された場合2種の刺激の違いの識別効果がより明確に現れることを示していた。2つの刺激を同時に提示した場合には、異なる2つ刺激に対する応答の変化はニューロン毎にかなり異なっていた。2つの適刺激に対する応答が単独に比べて減少するものでは、適刺激と不適刺激に対する応答は逆に増大する傾向が、また、2つの適刺激に対して応答が加算的に増大するものでは、適刺激と不適刺激に対する応答は減少する傾向がみられた。すなわち、前者においては非線形的な相互作用がより強く現れ、後者では線形の相互作用がより強く現れたものと考られた。また今回は、色の付いた図形刺激を用いで形の同一性を判断させる課題も行った。試行毎に提示される2つの刺激図形は2色のうちのどちらか同じ色であるが、形は同じ場合も異なる場合もある。これらの刺激に応答した186個のうち、形にのみ選択的な応慶をしたニューロンが64、色に選択的であったものが32個、形と色の両方であったものが18個であった。このような結果は、形と色の情報が連合野においても別々に処理されて随意的に結合されることを示唆するものである。
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