ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、顆粒球の酸素依存的殺菌作用に関与している。MPOは顆粒球に特異的タンパク質である。MPOは、顆粒球の前駆細胞である前骨髄球で専ら合成され、成熟顆粒球では合成されない。MPO遺伝子の組織特異的、発生特異的発現の分子機構は不明である。MPOのほかにも、顆粒球エラスターゼやカテプシンGが前骨髄球で特異的に合成される。本研究の目的は、これら、顆粒球の特異的遺伝子の発現の分子機構を解明し、さらに、それに基ずいて顆粒球の増殖と分化の機構を明らかにすることである。 HL-60細胞はMPOを合成しているが、レチノイン酸処理による顆粒球への分化にともなって合成を停止する。HL-60細胞のMPO遺伝子クロマチンには、MPOの発現に依存したDNasel高感受性部位が数ヵ所観察された。今回、MPO遺伝子の転写に関与するシスエレメントの同定について報告する。 MPO遺伝子の上流から下流までの14kb領域を制限酷素で消化し、これをエンハンサーを欠損スルSV40初期プロモータクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベクターに挿入した。得られたプラスミッドをMPO産生細胞SKM-1に導入し、CAT活性を定量した。挿入したDNAに依存して、イントロン7と9のDNAがエンハンサー活性を示した。イントロン7にはエストロゲン応答配列(ERE)が存在し、イントロン9にはレチノイン酸応答類似配列(RARE)、TRE、GATAの特徴をそなえた配列が存在した。DNAとHL-60細胞の核タンパク質との相互作用を解析したところ、タンパク質因子がEREとRAREに特異的に結合した。さらに、EREやRAREの合成オリゴヌクレオチドCAT活性のエンハンサー活性を示した。これらの結果は、二つのえれめんとがMPO遺伝子内現に関与していることを示唆する。
|