研究課題/領域番号 |
04247208
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金倉 譲 大阪大学, 医学部, 助手 (20177489)
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研究分担者 |
烏野 隆博 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
西浦 哲雄 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
金山 良男 大阪大学, 医学部, 講師 (30158852)
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キーワード | ストローマ細胞 / 血液幹細胞 / がん原遺伝子c-kit / 幹細胞増殖因子 / チロシンキナーゼ / 白血病 / 情報伝達機構 / 受容体 |
研究概要 |
ストローマ細胞は、その細胞表面にc-kitリガンド(SCF)を発現しており血液幹細胞に発現されているc-kit受容体を介し、血球の増殖・分化に重要な役割を果たしていると考えられている。我々は、ヒト白血病細胞をクローナルなモデルとしてc-kit受容体を介する血液幹細胞の増殖・分化機構の解析を行った。 急性骨髄性白血病(AML)細胞におけるc-kitの発現について検討すると、31例中26例(約84%)にc-kitの発現が認められた。c-kit蛋白を発現している症例の約7割において、AML細胞はSCFにより増殖が促がされた。これらのSCFに反応する症例の内、芽球の割合の高い7例を用いてSCFによる長期培養を行うと、一部に症例では、AML細胞の好中球/単球系細胞あるいはマスト細胞への分化が認められた。また、ヒト白血病細胞株に対しても、SCFによりc-kitは活性化され白血病細胞の増殖ならびに分化が促進が認められた。一般い、SCFの非刺激下ではc-kitはほとんど活性化されておらず、SCFと結合することにより活性化され、自己リン酸化、フォスファチジルイノシトール3キナーゼ(P13.キナーゼ)などの基質との結合などの諸反応が惹起されシグナルが伝達されると考えられている。しかし、一部のヒト白血病細胞株あるいはAML細胞では、SCFの刺激のない状態でもc-kitのチロシンリン酸化、活性化が認められた。そこで、我々は各種ヒト白血病細胞や細胞株を用いてc-kitの活性化の有無について検討した。その結果、ヒトマスト細胞白血病細胞ではSCFを全く産生していないにもかかわらず、SCF刺激前よりc-kitの恒常的チロシンリン酸化と活性化が認められ、c-kitはSCF刺激前よりP13キナーゼと結合していた。また、この白血病細胞ではc-kit遺伝子に点突然変異が認められた。以上の結部は、c-kitは正常造血ばかりでなく、ヒト白血病細胞の増殖や分化、あるいは腫瘍化にも関与している可能性を示唆するものである。
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