M-CSFの遺伝子に突然変異を持つために活性のないM-CSFを産生しているop/opマウスの新生仔の頭蓋冠から、間質細胞株OP9を樹立した。この細胞は、高い造血支持能を持つがマクロファージ分化を支持しないために、造血幹細胞の増殖に関する研究に特に摘していることが明らかになった。また、骨髄細胞と間質細胞の共培養系をコラーゲンゲルで覆って培養して造血幹細胞にコロニーを形成させる方法を改良し、コラーゲンゲルにsuspendした骨髄細胞を間質細胞層の上に植え込み、血球系細胞が間質細胞に接触しかつ動かないようにすることが可能になった。 c-kitは造血幹細胞が発現しているreceptor分子であり、間質細胞は細胞表面にc-kit ligandを発現している。このreceptor-ligand com-plexの造血幹細胞と間質細胞の接着への関与について検討した。c-kit遺伝子に突然変異を持つWBB6F1-W/W^Vマウスの骨髄細胞とOP9細胞を液体培地を用いて共培養すると、造血レベルが急速に低下した。しかし、骨髄細胞をコラーゲンゲルを用いて共培養すると、W/W^Vマウスの場合も正常マウスの場合に比べテ小さいが約80%程度の数のコロニーが形成された。骨髄細胞をOP9細胞と24時間共培養して接着しているものとしていないものに分けて造血幹細胞の数を測定すると、OP9細胞に接着している造血幹細胞の割合は、W/W^Vマウスの場合は正常マウスの場合に比べて有意に低かった。また、造血幹細胞のOP9細胞への接着が、c-kit receptorの機能を阻害するモノクローナル抗体ACK2によって抑制された。これらの結果から、造血幹細胞はc-kit recrptorとc-kit ligandの結合に一部依存して間質細胞に接着することが明らかになった。さらに、やか分化した造血幹細胞のほうが、未分化なものよりもc-kitに対する依存性が高いことも明らかになった。
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