研究概要 |
1.研究目的:アデノウイルスが細胞に感染した時、最初に転写されるE1A遺伝子の転写調共機構を明かにすることを目的に、E1Aエンハンサー配列に特異的に結合する細胞因子E1A-Fの構造と機能の解析を行った。 2.研究成果:λgt11HeLa細胞cDNAライブラリーを用い、E1Aエンハンサー配列をプローブとしてSouth-Western法を試みた結果、このプローブに特異的に結合するクローンを得た。このクローンのcDNAの塩基配列は、転写因子として注目を集めている。etsoncogenefanilyと非常に高いホモロジーを示し、その領域はDNA結合に必要なETS-domainに相当した。このcDNAをプローブとして用い、HeLa細胞中に約2.5kbのmRNAがNorthern法で検出され、アデノウイルスの感染に伴いその量は増加した。さらに,1)E1A-FはマウスのPE3(PolyomavirusEnhancerActivator3)と非常にホモロジーが高いこと。2)ElA-Fは上波系や線維芽細胞系で発現しているものの、血球系の細胞で発現していないこと。3)AlternativeAplicingを示す少なくとも3種類のcDNAがとれており、そのうちの1つに対応するmRNAは約1.5kbで、各種細胞で、かつ大量に発現していること。4)ElA-Fが結合配列特異的な転写活性化能を示すこと等が明らかになった。 3.考察:我々は、ElA-Fがアデノウイルスの増殖および細胞のがん化の際に中心的な役割を果たすElAの転写調節に重要であると考えているが、実際にElA遺伝子の転写にどのようにかかわっているのかを明かにすることが今後の課題である。そこで、ElAプロモーターに及ぼす影響をElA-F発現ベクターを用い解析する。またubiquitouslyに発現するElA-F関連mRNAがコードする蛋白の構造を明らかにし、その機能を解析したい。
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