我々は、ヒト消化管粘膜構成糖脂質の分析を行い、それぞれの部位に特異的な発現が認められることを見い出しこれを論文とした。近日中に印刷発表される予定である。このなかで、胃粘膜ではシアロ糖脂質に代わって硫糖脂質であるスルファチドが多量に含まれており、これが粘膜防御機能と関係している可能性を学会発表した。さらにスルファチドが近年胃炎の原因として注目されているHelicobacter pyloriの接着受容体として機能している可能性を報告した。また都臨床研田井博士との共同研究による、スルファチドに対する単クローン抗体を用いて消化管粘膜におけるその細胞局在を明らかにすることに成功した。現在その詳細につきさらに検討中であり、論文報告を予定している。一方消化管粘膜細胞におけることから酸性糖脂質の生合成とその調節に関して、まず家兎胃粘膜単層培養系の作成を試みほぼ満足すべき培養系の確立に成功した。この系を用いて ^<35>S一硫酸の硫糖脂質への取り込みを検討すると、測定可能な程度にスルファチドの生合成が認められた。しかしこの他にもコレステロール硫酸さ思われるバンドが検出された。もとの粘膜にはコレステロール硫酸は少量しか含まれていないので、これが培養系に移したための現象なのかどうか検討中である。硫糖脂質の生合成に対する各種生理治性物質の影響については今后の課題であるが、予備的な検討では、非ステロイド系消炎鎮痛剤やステロイドがその合成を抑制することを見い出しており、今后それらの作用がどの程度再現されるのかを更に検出する予定である。
|