研究概要 |
糖脂質の代謝にかかわる種々の水解酵素の活性制御には活性化蛋白質が関与している。Saposin-Cはリソゾーム性β-グルコシダーゼ活性化能を持つ活性化蛋白質であるが、我々はまずこの蛋白質をウシ脾臓から精製し全アミノ酸配瞬を決定し、活性化蛋白質の部分断片化の実験結果から、活性化蛋白質分子内で35番残基周辺が酵素グルコセレブロシダーゼとの相互作用に重要な部位であることを証明した(Biochim.Biophys.Acta 1120,75-80)。 またヒト保護蛋白質発言されたcDNAのstable transformantで発現された保護蛋白質がエステラーゼ活性とカルボキシペプチダーゼ活性を合わせ持ちβ-ガラクトシダーゼと複合体を形成することを明らかにし、またこれらの活性がsaposinによって保護されることを証明した(J.Biol.Chem.268,1180-1186)。 Saposin-Cに対する抗体を作成し、saposin前駆体であるProsaposinのラット脳における分布を検討した。部位別のウェスタンブロットにおいて、prosaposinは海馬、脳幹、小脳、線状体、視床下部に豊富に存在し、成熟型saposinはどの部位においても検出されなかった。免疫組織化学的手法による結果は同様に、皮質下に多くの反応が見られた。免疫反応は神経細胞体および線維に見られ、グリア細胞には観察されなかった。部位的にはコリン作動性ニューロンが多いとされる神経核に反応が強く見られ、それらの神経核が投射する部位において、神経線維が陽性に染色された。中枢神経系では、前駆体のprosaposinとしてそのほとんどが存在し、神経細胞体において合成され、軸索内をターミナルへの運ばれることが考えられた(J.Comp.Neurol.in press)。
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