研究概要 |
本研究では、発がんプロモーションのメカニズムをシグナル伝達と遺伝子発現の立場から研究した。細胞モデルとしてはケラチノサイトを用いた。 1.Cキナーゼ分子種の発現: われわれの分離したnPKCηは、分化したあるいは分化しつつある上皮細胞に特異的に発現している。細胞内では粗面小胞体に局在し、発がんプロモーター処理によって細胞内移行せず、ダウンレギュレーションも受けない。Baculovirus法で作った酵素はカルシウム非依存性に活性化された。増殖している上皮細胞では、cPKCαとnPKCδが発現していた。このほかnPKCθが筋肉、精巣に発現していることを見出した。 2.リン酸化タンパクの同定: マウスケラチノサイトをオカダ酸で処理したとき、ケラチンがリン酸化され、それに伴って細胞形態が変化することを見出した。 3.ケラチノサイト分化遺伝子の分離: ケラチトサイトの分化においてトランスグルタミナーゼの基質となる新しい蛋白、spr/cornifin遺伝子をクローニングした。sprI,IIが存在し、それぞれ146,108個のアミノ酸から成り、8あるいは9個のアミノ酸のくり返し配列をもつ。皮膚のみに特異的に発現している。 4.三次元培養による皮膚の構造と機能の解析: ケラチノサイトと線維芽細胞を再構成し、三次元にヒト皮膚を培養する実験系を開はした。この系を用いて上皮細胞-間質細胞相互作用、特にパラ分泌増殖因子の役割を分析した。
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