研究概要 |
フレンドウイルスゲノムの特定領域を発現する組換え型ワクシニアウイルスを用いて、FBL-3腫瘍細胞特異的な主要CTLクローン3株を含む10株についてその腫瘍抗原エピトープの固定を試みた。その結果gag p15領域140アミノ酸残基内にエピトープが限定された。その領域のN端側から順次15〜20残基のペプチドを合成し、その標的活性をしらべることによりp15のC端側30残基内に標的を限定した。 FBL-3腫瘍細胞特異的ThクローンはCTLクローン500株に対して1株の割合でしかえられないが、これまでにB6(I-A^b)マウス由来3株とBALB/cとのFI(I-E^b_βE^d_α)マウス由来1株を分離した。そのTCRはそれぞれVα_4Jα_<22>/Vβ_1DJβ_<2.5>,VαJαnew/Vβ_<15>DJβ_<2.1>、Vα_<11>Jα_<0.9>/Vβ_<8.1>DJβ_<2.6>、Vα_4Jα_3DT/Vβ_<15>DJβ_<1.2>であった。組換之型ワクシニアウイルスを用いて標的ペプチど領域を検索したところ、env680残基中N端230残基内に3株、C端側p15E蛋白の近傍90残基内に1株を固定した。その領域内から20残基ペプチドを合成して活性をしらべ2種の活性ペプチドenv_<122-141>とenv_<462-479>をえた。前者は独立のB_6由来Thクローン2株に反応し、後者はF_1由来Thクローン1株に相応した。活性ペプチドeno_<122-141>はC端4残基、N端3機基を欠失させても活性を保持した。残存13残基についてその活性残基を同定するために各残基を側鎖の短いアラニンによって置換したところ、13残基中5残基の置換によって失活が見られた。これらの5種の失活した置換ペプチドでenv_<125-131>活性に対す競合阻害を試みたところ、3種で阻害がみられた。置換ペプチドが活性ペプチドと競合できるのは、MHCとの結合能を保持しているがTCRの認識を失ったためと考えられる。すなわちLTPRCNT中1,2,6番目のL,T,N残基がTCRの認識に関与し、4,7番目のR,T残基がMHCとの結合に関与する。将来腫瘍ワクチン設計のための有用な知見を提供するものと考えられる。
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