ヒト原発肝癌の発生メカニズムを解明するために、最近開発されたDNA二次元電気泳動(RLGS)法を用いて肝癌ゲノムDNAに生じている変化を検策した。この方法はgenomeDNAのNotlsiteをガイドポストとしてその近傍のDNAの構造の変化を検出するものである。即ちゲノム上のNotlsiteはアイソトープによりラベルされゲル上にはNotl断片がスポットとして検出される。原発肝癌16例の患者より癌部と非癌部組織よりDNAを抽出・精製したRLGSを用いて非癌部との対比で癌部に生じている変化を検討した。癌部に認められた変化は大きく二つに分けられる。第一には癌部に新しく出現したり、あるいは増強するスポットが15個認められた。その内注目されるのは、症例の50%以上に共通して著しく増強しているスポットが5ケ認められたことである。そのうち一つのスポットは16例中10例(63%)、4つのスポットは16例中12例(75%)といずれもその頻度は高率であった。また、一つのスポットは、一症例において癌部のみならず非癌部においても増強が認められた(他の症例の非癌彰との対比)。癌部において認められた変化の第二は、癌部において減少あるいは消失するスポットの存在である。これらは16例全体で60個存在した。これらの中で50%以上の症例で共通して変化するものが28個、さらにその中で70%以上の症例に共通しているものが5個認められ。今後は、変化の認められたスポットに対応するDNA断片が如何なるものであるかを明らかにしていく予定である。そのためには、ゲルより目的のスポットを確実にクローニングする方法を開発する必要がある。ゲルより回収された微量のDNA断片をPCR法を用いてcloningする方法が考えられ、そのための予備実験を進めている。
|