研究概要 |
サイトカイン系におけるシグナル伝達機構の解明を目的とし、インターロイキン2(IL-2)系をモデルシステムとして用い、IL-2受容体β鎖を介する細胞内情報伝達機構の解析を行なった。昨年度には、srcファミリーチロシンキナーゼp56^<lck>が、β鎖の“acidic"領域を介して会合しててること、更にIL-2刺激に伴い活性化されることを報告した。本年度は更に、p56^<lck>の活性化には、β鎖との会合が必須であること、加えてもう1つの領域“serinerich"領域も必要であることを明らかにした。またp56^<lck>を発現していないBAF/BO3細胞においては、他のsrcファミリーチロシンキナーゼp59^<fyn>がβ鎖と会合しうること、又IL-2刺激に伴いP59^<fyn>及びp53/56^<lyn>が活性化されることを示した。さらにsrcファミリーチロシンキナーゼの活性化は、p21rasの活性化を介して核内プロトオンコジーンc-fos,c-jun遺伝子の発現を誘導すること、一方細胞増殖に必須な“serine-rich"領域を介してc-myc遺伝子の発現が誘導されることが明らかとなった。サイトカイン遺伝子の発現機構の解明を目的とし、インターフェロン系においてその解析を行なった。本年度は転写調節因子IRF-1及びIRF-2の細胞増殖制御における役割について検討する目的で、IRF-2発現ベクターを遺伝子導入しIRF-2高発現NIH3T3細胞株を樹立した。得られた細胞株は、ヌードマウスにおいて腫瘍形成が認められ、IRF-2が、oncogeicpotentialを有することが明かになった。更にこれらの細胞株はIRF-1ゲノム遺伝子導入によるIRF-1高発現によって野生型に復帰することから、IRF-1がanti-oncogenic potentialを有することが示された。さらにヒトIRF-1遺伝子が白血病やMDS患者細胞で欠損の見られる染色体5q31.1に位置することを明かにした。そこで5qに異常の見られた白血病及びMDS患者13例のサンプルでのIL-4,IL-5,IRF-1,CDC25C,GM-CSF遺伝子の欠損の有無を検討した結果、IRF-1遺伝子のみがすベての症例に一致して欠損していることを見い出した。
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