研究概要 |
Lonidamineは,Cisplatin(CDDP)と併用することにより,ヌードマウスに移植したヒト乳癌MX-1を完全に消失することが知られている。本研究では、この抗癌効果の増強が癌細胞のエネルギー代謝に関係するものと推測して、ヌードマウスに移植したヒト乳癌MX-1を用いて、LonidamineとCDDPとの併用による抗癌効果増強の作用機作について検討を行った。その結果,下記の成果を得た。 1)Lonidamineは,MX-1から単離したミトコンドリアのグルタミン酸(+リンゴ酸)及びコハク酸を基質としたstate3呼吸活性を阻害した。 2)CDDPは,これまでミトコンドリアの呼吸活性に対する作用についての報告はなされていなかったが,今回の実験により,グルタミン酸(+リンゴ酸)を基質としたstate3呼吸活性は阻害することが明らかになった。 3)LonidamineとCDDPの併用効果についてしらべたところ,グルタミン酸(+リンゴ酸)を基質とした呼吸活性の阻害は,併用により顕著に増強され,それぞれ単独の場合と比べてはるかに低濃度で阻害されることが解った。 4)CDDPの作用部位は,NAD連鎖の還元酵素であり,内在NAD(P)^+の還元を阻害し,この阻害はLonidamineと併用することにより増強されることが明らかとなった。 今回の発見は,LonidamineによるCDDPの抗癌活性増強について,従来とは全く異なる作用機作の面から解明した最初の報告であり,併用によるMX-1ミトコンドリアの呼吸阻害の増強が,ヌードマウスに移植したMX-1を劇的に消失させた主要な要因であると推測され,この系は,抗がん剤の効果増強を引き起こす新システムとして利用可能であると思われる。
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