研究概要 |
これまで申請者らは、モノクローナル抗体(MAb)MUSE11により検出れる癌関連ムチン抗原分子のコア蛋白について解析し、本抗体がコア蛋白の20アミノ酸より成るtandem repeat部分を認識しており、遺伝子産物としてのムチン分子を検出する上できわめて有用であることを報告してきた。また、コア蛋白cDNAをクローニングし、その一部を用いて組み換え蛋白を作製し、これを免疫原として数種の新しい抗コア蛋白MAbを確立した。 以上の実績に基き、本研究においてはさらに解析を進めた。 1)コア蛋白のtandem repeat部分に存在するPDTRP配列について、オーバーラップする数種のペプチドを合成し、エピトープマッピングを行った。 2)内部イメージを有する抗イディオタイプMAbを既報(Cancer Res.,51:2599,1991)に基いて作製し、RT-PCR法を用いてV領域のcDNAクローニングを行いアミノ酸配列を決定した。 3)組み換えムチンコア蛋白を抗原として、ELISA法あるいはウェスタンブロット法を用い、癌患者血清中の抗コア蛋白抗体を検索する。また、本蛋白を免疫原として、cytotoxic T細胞を誘導しうることが明らかになっているので、その性状について検討した。その結果、CTL line(TN)はCD3およびCD8陽性で、かつalphabeta型TCRを示した。 4)正常組織においてはフコースがMUSE11のエピトープを一部maskすることが明らかとなったので、MUSE11抗原の検出されない癌組織や細胞株において、fucosyltransferaseの発現レベルを酵素活性測定により検討することが可能となりつつある。
|