シュードモナス菌由来のTDLプラスミドの存在するキシレン完全分解系は、2つのオペロンと2つの調節遺伝子から成る。この系の4つのプロモーターのうち。第1オペロンとXyls遺伝子のプロモーターには約140bp上流に、エンハンサー様配列が存在し、ここに給合した正の調節蛋白質XylRとRNAポリメラーゼ(この場合はα54を利用する)の間でDNAループが形成されることを示唆する結果をえている。 α54をもつRNAポリメラーゼを利用する他の系において、Integration host factor(IHF)がDNAグループ形成に関与するという所見が発表されている。IHFを欠く大腸菌変異株を用いた解析によると、第1オペロこの発現は完全にIHFに依存していたが、Xyls遺伝子の発現はIHFの依存性がみられなかった。 第1オペロンではプロモーターと上流のエンハンサー様配列の中間の位置にIHFが結合する。この結合部位を含むDNA断片の電気浮動による解析により、IHFの存在下ではT度この位置にDNA湾曲の中心が存在することを明らかにした。従って第1オペロンではIHFの結合がDNAループ形成を促進しそれにより転写の活性化が的われるというモデルが考えられた。 同様の実験によりXyls遺伝子プロモーターではIHFはT度プロモーターの位置に湾曲中心を形成させることが明らかになった。一方、IHFを加えない条件下での電気浮動解析により、Xyls遺伝子上流には少くとも3つの湾曲中心が認められた。このことから、Xyls遺伝子ではDNA領域に本来備わっている湾曲しやすい性質が転写の活性化を招くものと考えられた。Xyls遺伝子に対してIHFはむしろ転写抑制に働くものであった。
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