研究概要 |
抑制性グリシン受容体・C1^-チャネルの機能を修飾する細胞内情報伝達機構を明らかにすることを目的とし、ツメガエル卯母細胞に発現させたクローン化cDNA由来受容体(α1およびα2)の活性に対する種々の蛋白リン酸化関連薬物の効果を検討した。ラットtrigeminal neuronにおいてcyclic AMP-蛋白キナーゼA(PKA)系の賦活によりグリシン反応が増強されることが報告されているが、α1、α2homomeric受容体を介するC1^-電流に対しては、PKA関連薬物(forskolin,cyclic AMPなど)は有意な効果を示さなかった。蛋白キナーゼCを活性化するphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)を低濃度(1-30 nM)で5-10分間、細胞に潅流適用したところ、α1およびα2受容体を介するグリシン(0.1mM)誘起電流はPMAの濃度に依存して抑制された。PMAの作用は持続的で、薬物除去後60分経過してもグリシン反応は回復しなかった。一方、ラット前脳から抽出したmRNAを注入した卯母細胞から記録されるカイニン酸(0.1mM)誘起電流はPMAにより阻害されなかった。PMAによるグリシン反応の阻害はstaurosporine(1μM)の存在下で減弱された。α1受容体のリン酸化部位となりうるSer,Thr残基をすべてAlaに置換した変異受容体に対してPMAは野生型受容体と同程度の抑制効果を示した。以上の結果から、PMAによるグリシン電流の抑制作用は蛋白キナーゼCの活性化によるものと推定されるが、その作用機構は複雑であると考えられる。
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