生後2周齢のラット延髄を摘出し、スライサーにより厚さ120μmのスライスを作成した。ノマルスキー顕微鏡下に弧束核ニューロンを同定して、パッチクランプ法のホールセル記録を行った。潅流液にテトロドトキシンを加えて、シナプス伝達をブロックした後、サブスタースPを投与したところ、内向き電流が観察された(固定電位-50〜-70mv)。内向き電流は、コンダクタンスの増大と、ノイズの増大を伴っていた。サブスタンスP投与の前後にランプ波電位(-150〜+50mv)を与えて、膜電流を記録(薬物投与前後の電流の差から、サブスタンスP波発電流の電位依存性を求めた。サブスタンスP波発電流は、約0mvで電流極性が反転し、やや外向き提流の性質を示した。この反転電位は、外液のCl濃度を1/10に減少しても、有為に変化しなかった。又、外液のNa^+濃度を減少させると負電位の方向に移動した。したがって、サブスタンスPは弧束核ニューロンの陽イオンチャンネルの開口を介して、興奮作用を発揮するものと結論される。そこで、次に、サブスタンスPによって誘発される電流ノイズの解析を行った。サブスタンスP誘発電流のピーク付近の記録から、サブスタンスP投与前の記録を差引き、差電流ノイズについて解析を行った。ノイズの分散と、電流平均値との比から求めた単一チャンネルコンダクタンスの値は21.7PSであった。又、Lorenjian曲線のcut-off froguenyから求めた単一チャンネル平均開口バースト時間は88msecであった。サブスタンスPは、おそらく細胞内情報伝達系を介して、22PS陽イオンチャンネルを活性化し、開口確率を上昇させることにより内向き電流をひき起ると推論される。
|