研究課題
膀胱炎は頻尿と下腹部痛が症状として良く知られている。我々はこれまで酢酸やホルマリンといった化学刺激によるモデルを用いて急性膀胱炎モデルを作製し、麻酔した動物では頻尿を指標にその実験を行ってきた。今回は急性炎症に伴って上昇するサイトカインの一つインターロイキン1β(ILIβ)が膀胱知覚に及ぼす影響について検討し、より臨床に近いモデルの作製を検討した。膀胱内圧を測定しその内液中にILIβを投与すると膀胱収縮の頻度が40-80%上昇した。この時最大収縮圧は10-40%の上昇を認めた。正常では第五腰髄後根線維から記録される放電は膀胱の収縮に伴い増大するが、ILIβを膀胱内腔投与すると放電は次第に増加し、収縮に係わらず高頻度で持続的になった。第五腰髄後根神経節より取り出し膀胱知覚ニューロンを単離して、細胞内Ca^<++>指示薬のFura2を取り込ませてILIβによる影響を検討した。ILIβ(1-2ug/ml)は投与後5分以内に細胞内Ca^<++>量を上昇させた。最大値は投与前の180-220%となり、投与15-35分後に回復した。これは細胞内Ca^<++>の移動を抑制するライアノジンによって、約70%抑制された。また、ウレタン麻酔したラットで、尿道より膀胱内細いカテーテルを挿入し膀胱を開放状態とし、膀胱内をILIβ(0.1-0.5ug/ml)で2時間潅流し、その時におこる脊髄2次・3次細胞でのc-fosの発現を免疫組識化学法を用いて検討した。c-fosの発現は第五腰髄に限局し、脊髄後角表層のLaminae I-III層と、中間層側索よりのLaminae V-VII層に限局して分布した。このc-fosは脊髄髄腔内にタヒキキニン受容体の一つNKI受容体の拮抗剤CP96345(0.5-5ug)で80%抑制された。従って、ILIβは膀胱粘膜の神経終末に作用し、その興奮はサブスタンスPを含む神経伝達物質を脊髄で放出している事が明らかとなった。
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