研究概要 |
大腸菌F因子によりコードされるLetD蛋白質は、宿主大腸菌染色体の分配を阻害し、細胞を死に至たらしめ、LetA蛋白質はLetD蛋白質の致死作用を仰える働きを持つ(Miki et al.(1984).J.Mol.Biol.174,627-646).LetA、LetD蛋白質による大腸菌染色体分配調節の分子機構を解明することを目的に研究を行った。 LetD蛋白質を多量生産する大腸菌細胞内ではプラスミドDNAは著しく弛緩しており、その細胞からのDNAジャイレース活性、Aサブユニット活性(サブユニットBを添加して活性測定)は、いずれも正常細胞中の1%以下に減少していた。この不活性化されたDNAジャイレース、Aサブユニットは共に、精製したLetA蛋白質により再活性化される(Maki et al,(1993).J.Biol,Chem.267,12244-12251)。 1.LetA蛋白質による再活性化を指標に、LetD蛋白質多量生産株中の不活性型Aサブユニットを700倍精製し、ほとんどhomogeneousな標品を得た。その結果、不活性型Aサブユニットは、GyrA蛋白質(97kDa)2分子、LetD蛋白質(11.7kDa)2分子よりなる分子量220kDaの複合体であることが明かとなった。この複合体形成がgyrA蛋白質不活性化の原因であると思われる。 2.精製不活性型Aサブユニットは精製LetA蛋白質により再活性化される。この際、LetA蛋白質はストイキオメトリックな量必要で、再活性化した試料のショ糖密度勾配遠心の結果は、ジャイレースAサブユニットは活性型の2量体に戻り、LetD蛋白質は64kDaのLetA・LetD複合体(LetA2分子、LetD4分子)を形成していることを強く示唆する。LetA蛋白質は不活性型AサブユニットよりLetD蛋白質を奪い取り、LetA-LetD複合体を形成することにより再活性化を行っているものと推測される。
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