研究分担者 |
平井 俊策 群馬大学, 医学部, 教授 (50010153)
太田 茂 東京大学, 薬学部, 助手 (60160503)
直井 信 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (50022786)
吉田 充男 自治医科大学, 医学部, 教授 (70048966)
田中 雅嗣 名古屋大学, 医学部, 助教授 (60155166)
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研究概要 |
パーキンソン病5例の脳ミトコンドリアDNA(mtDNA)の全シークエンスを行い,対照患者には稀にしか出現しないアミノ酸置換を伴う点変異を合計9箇所みつけ,そのうちcysteineやhistidineなど酸化的障害を受け易いアミノ酸への変異のあることを明らかにし,他のアミノ酸置換についても細胞死との関係を検討している。更に昨年度迄にあきらかにした欠失mtDNAの存在と変性との因果関係を詳細に検討するために,mtDNAのin situ hybridization法を確立し,神経細胞死との関係を検討している。 パーキンソン病の原因候補物質については,N-methyl-TIQの動物投与で核の腫大,封入体状構造物の出現を明らかにし,dopamine由来のsalsolinolとその誘導体が,monoamineのrelease,水酸ラジカルの発生を起こし,黒質に毒性を持ちうることを明らかにした。又新しいパーキンソン病原因候補物質1-benzyl-TIQを発見,これがヒト脳,脳脊髄液に存在すること,ミトコンドリア複合体Iを阻害することを明らかにした。更にβ-carobline誘導体のパーキンソン病原因候補物質β-carbolinium ion,2-9-dimethyl-β-carbolinium ionが実際脳で出来ることを証明した。又これら候補物質の脳内濃度を測定する電極を開発し,実用に供した。 パーキンソン病の発症機序に関連した第3の異常,黒質の鉄沈着に関し,黒質・線条体の初代培養を確立し,鉄がドーパミン性神経細胞に対し実際毒性を示すことを証明,その際脂質過酸化亢進が起きることを証明した。又鉄酸素錯体がsuperoxide anionの生成と,それによる細胞障害を起こすことを示し,鉄が神経細胞死の一因となることを証明した。 以上,パーキンソン病の発生機序に関連する3つの障害,即ちミトコンドリア障害,鉄沈着,神経毒性物質が互いに独立のものでなく,相互に関連を持ちながら黒質変性に寄与していることを明らかにし,何が最初の原因か現在鋭意研究をすすめている。
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