研究課題
自食作用(autophagy)は全ての真核細胞がもつ普遍的で重要な生理機能の1つである。本研究は膜系の複雑さから多くの困難な点をもつ高等生物のモデル系として酵母を用いる点に特徴がある。我々が近年見い出した酵母における自食作用の素過程を分子レベルで明らかにすることを目的とした。本年度に得られた主たる成果は以下の通りである。(1).炭素源飢餓によるオートファジィックボディを蓄積した液胞を単維する条件を確立した。その生化学的な解析によって、活性を保持した細胞質成分が、大量にかつ非選択的に液胞内に取り込まれることが明らかとなった。またこの時液胞内に特異的に出現する膜タンパク質を1個同定することに成功した。(2).液胞欠損株(vam5)を用いることにより短命な中間体であるオートファゴソームを分離できることが示された。(3).液胞内タンパク分解をpmshを用いることにより測定可能となった。飢餓条件下で起こる自食作用によるタンパク分解は細胞の生存にとって必須であることが明らかとなった。(4).電子顕微鏡を用いた連続切片の三次元再構築により、オートファゴソーム形成過程を詳細に解析し、中間構造を同定した。(5)、自食作用に欠損をもつ変異株(apg)を系統的に分離し、それらの置伝解析の結果、15個の核性置伝変異鋼apg1-15を同定した。これらの株はいずれも栄養飢餓条件によって誘導されるタンパク分解が起こらなかった。今後これらの株を用いることにより、自食作用の素過程とその相互関係を明らかにし、その生理・生化学、分子生物学的な研究が期待される。
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