研究概要 |
目的:ゴルジ領域における細胞の巧妙な選別輸送は驚嘆に値する。その選別の機構を把握するために我々はこの選別輸送の流れを止めたり変化させる哺乳類細胞の遺伝変異株を駆使して小胞体-ゴルジ複合体領域の輸送機序を明らかにしたいと考えた。そのために,ゴルジ体を標的とするモネンシンならびにブレフェルジンAに対して独立に単離した2種類の耐性遺伝変異株を対象にして以下の研究を進めることにした。1.モネンシン耐性で選択したマウスBalb/3T3由来のMO-5株は,上皮増殖因子(EGF)やウィルスのとりこみが欠損している。EGF受容体を対象にEGFのシグナル応答の細胞増殖に対する分子機序を検討する。2.ブレフェルジン耐性で選択したヒトKB細胞由来のKB/BFA-1株の単離に最近成功し,ゴルジ体の形態変化を観察しているのでこの株を用いてゴルジ体の細胞分泌に関与する役割について把握する。 結果:1.親株Balb/3T3ならびにMO-5株にヒトEGF受容体cDNAを導入過剰発現させたBNER4およびMNER23株を各々樹立した。ポリオーマウィルスmiddeT抗原やウィルスsrcオンコジンを導入した所BNER4では外来性のEGF添加によって著明にdown調節が阻害される時に,MNER23株においては全く阻害をうけないことが観察された。膜EGF受容体とウィルス成合との相互的な反応性がモネンシン耐性変異によって影響をうけている可能性を示唆した。2.親株KB由来のKB/BFA-1株においてはゴルジ体の構造が特異的に変化していた。さらにゴルジ認識のβ-COPやその他の特異蛋白がゴルジ由来と推察される小胞への局在が変異株で多数観察された。またゴルジ体の膜蛋白の成熟や分泌がブレフェルジンによって親株に較べて阻害をうけにくくなっていた。ゴルジを中心とする機能が薬剤に対して耐性変異をうけていることが示唆された。
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