1.枯草菌は大腸菌と並んで分子遺伝学の対象として40年以上研究されている。グラム陽性菌の枯草菌は陰性の大腸菌と複製開始領域を初め多くの生存必須な遺伝子を共有している。一方枯草菌には胞子発芽に代表されるような固有な機能が発達しておりそれに関与する新しい遺伝子が進化している。このように枯草菌と大腸菌の比較は原核生物の遺伝情報の全体像と進化を解明する上に欠かすことができない。この様な観点からECと日本において枯草菌が大腸菌とならんでゲノム解析プロジェクトの対象として採用されている。本研究はこれらのプロジェクトから得られる配列情報を収集し各種の解析に広く利用可能な枯草菌ゲノムデータベースを作成すると共に、得られた情報の分子遺伝学的、分子進化学的解析を行うことを目的とした。 2.枯草菌では遺伝子のリボゾーム結合配列のrRNAに対する相補性が高いことが特鐘である。我々のグループで既に配列決定を完成した105Kbの領域について、リボゾーム結合配列の候補を伴すORFを探索したところ、既知のものを含めて87個のものが同定された。同時に、そうしたORFが存在していた。このことは枯草菌ではコード領域の推定が比較的容易であることを示している。また、その大きさは200-400アミネ酸のものが多く、多均した1Kb当り1ORFであり、枯草菌全ゲノムには約430ORFが存在することが示唆された。 3.決定された配列から示複を取り除き遺伝子(ORF)等の情報を加えたゲノムデーターベースの作成も重要な課題であり、情報専門家および大腸菌・酵母の研究者との共同により、"染色体配列マネージメントツール"の開発という形で具体化した。来年度、配列決定の本格化とあわせて、その運用を具体化したい。
|