RecA蛋白質の行なうDNA組換え反応は、ATP存在下で単鎖DNAに結合して形成されるヌクレオフィラメントを介して行なわれている。従って、このヌクレオフィラメントの構造解析は、DNA組換え反応の分子機構を理解する上で必須である。我々は、このフィラメント上に存在する、二つのDNA結分部位について解析を行なっている。 recA遺伝子に部位特異的に変異を導入し、15種類の変異体を作成した。それらの生体内に於ける性質から、その機能が野生型に比べて低下している。4種類について変異型RecA蛋白質を精製し、生化学的解析を行なった。その結果、RecA-R243A変異型蛋白質は、野生型よりも第一のDNA結合部位の機能が劣っていることが示された。このことは、243番目のArgを含むC末端のβ-sheet構造が、第一のDNA結合部位を形成していることを示唆する。また、RecA-Y264A変異型RecA蛋白質は、RecA-RecA相互作用能が劣っているためにDNA結合能が低下していることが示された。 これらの変異型蛋白質を用いて、C末β-sheetがヌクレオフィラメント上の第二のDNA結合部位にも関与するのか検討した。野生型及び、変異型RecA蛋白質それぞれについてヌクレオフィラメントを形成させ、それらの第二のDNA結分部位の結合能を比較した。その結果、RecA-R243A変異型蛋白質は、第二のDNA部位の機能も劣っていることが示された。従って、C末β-sheetは第二のDNA結合部位も形成していることが、示唆される。また、従来、第二のDNAに対する結分力の測定についてはまったく報告されていないが、今回単離されたRecA蛋白質のヌクレオフィラメントを用いて、第二の相補的なDNAとの結合力を測定した結果から、第一のDNAに対する結合力より、10倍以上強いことが明らかになった。
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