相同的組換え機構の解明には、その頻度が上昇した組換えのホットスポットの解析が有効と思われる。このことは、自然突然変異の機構解明にミューテーターの果たした役割を考えれば明かであろう。我々は大腸菌のRNaseH欠損変異株において、特に顕著に上昇するホットスポットを見いだし、解析を進めきた。具体的には、計8ケ所のホットスポット(HotA-H)は、一つを除き複製終結領域に有ること、調べた全てが、大腸菌の組換えホットスポットとして既に知られているChi活性を有していること、その内の3ケは、複製終結反応に依存すること、少なくともHotA活性はChi配列にも依存することを明らかにした。本年度は、(1)Hot活性は野性株においても、検出できるか?(2)Hot活性は真に組換え活性を反映しているか?について調べた。(1)野性株においても、そのHot活性はRNaseH変異株に較べると低いものの認められた。しかもその活性も終結反応とChi配列に依存していた。このことは、この現象が、通常起こっていることを示唆している。(2)最近他研究者から、特殊な系ではあるものの、Chi配列を有するDNA断片が、ローリングサークル型複製により増幅する結果が報告された。我々の系においても、もし同様なことが起れば、これまでのモデルは崩壊する。つまりHot活性は組換えでなく、複製能を反映していることになる。これについて調べた。方法としては、1)HotAのChi配列を共に破壊し、2)HotAと複製終結点(TerB)との間に、新しいChi配列(両方向)を挿入した。その結果、HotA自身にChi配列が無くても、その外に新しく挿入したChi配列(元と同方向)があれば、HotA活性が回復することが判明した。以上の結果から、これまで不明であった、環状染色体上のRecBCD酵素の侵入口の一つが、複製終結点であることがほぼ確かとなった。
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