神経系は免疫と同様、外界からのさまざまな情報を受容認識し、記憶するという巧妙な機能を備えている。免疫系では、この情報処理に遺伝子の体細胞での変化が極めて重要な役割を演じている。私達のグループでは、遺伝子再構成や遺伝子変換を検出するための基質をもつトランスジェニックマウスを用いて、発生途上に於ける中枢神経系でのDNAに変化を検索してきた。一方、遺伝子再構成の解析には環状CNAもまた有用な手だてとなる。DNAの体細胞での変化にはさまざまなタイプが考えられるが、それがDNAの欠失を伴うものであれば、脳から環状DNAを単離しそれをプロープに染色体構造の変化を解析することができる。私達は、マウス新生仔の脳より環状DNAを調製し、EcoRIで切断して、プラスミドライブラリーを作成した。環状DNAのクローンのうち、特に興味深いのは、切り出しの際に生じた組み換え点を含むクローンである。まず、この組み換え点の構造を単離することを試みた。ものクローンが組み換え点を含んでいれば、それをプローブに胚細胞型染色体DNAを解析すれば、プローブとは長さの2本のバンドが検出される筈である。私たちは、マウスの肝臓のDNAをEcoRIで切断し、環状DNAのクローンをプローブにしてハイブリダイゼンションを行なった。約80株のクローンを調べたところ、11個のクローンが、プローブとは異なった2本のバンドにハイブリダイズした。これらの環状DNAのクローンをプローブとして用いれば、それに対応する染色体の領域を単離することができる。更に、両者の構造を比較することで、結合部位の同定が可能になるのみならず、結合点周辺の構造から組み換えのメカニズムに関する知見の得られる可能性もある。現在、いくつかの環状DNAのクローンについて、対応する染色体構造を解析中である。
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