血管内皮細胞から放出される物質は中皮平滑細胞に作用し、血管径の増減に重要な役割を果たすことが知られている。内皮平滑筋連関を理解するために、ターゲットである平滑筋細胞の調節機構について知ることが大切であろう。平滑筋収縮の調節にはミオシン軽鎖リン酸化の関与が知られている。私は平滑筋ミオシンの機能調筋サブユニットであるリン酸化軽鎖に分子上の位置を研究している。昨年度は平滑筋ミオシンサブフラグメント-1(頭部断片)をzero-length化学架橋剤で処理すると、ミオシン重鎖とリン酸化軽鎖の間に架橋が起こることを発見した。本年度は、架橋サブフラグメント-1をタンパク分解酵素で断片化し、プロテイン・シークエンサーを用いて架橋アミノ酸残基の一次構造上の位置を決定した。 重鎖に架橋アミノ酸は845番目のリジンであり、リン酸化軽鎖の架橋アミノ酸は168番目、170番目、171番目のいずれかのアスパラギン酸であった。架橋リジンはMoLachlanとKarn[McLachlan.A.D.& Karn.J.(1982)Nature 299.226-231]がミオシン頚部にあるちょうつがい部分に当たると提案したプロリン(848番目)に非常に近く、このリジンもミオシン頚部に位置する。リン酸化軽鎖の架橋アスパラギン酸はC末端に位置することがわかったので、リン酸化軽鎖のC末端領域はミオシン頚部のちょうつがい部分に非常に近い位置に結合していることになる。平滑筋ミオシンのリン酸化に依存して起こる変化には頚部のちょうつがい部分が非常に重要な役割を演じているので、本研究に結果は、リン酸化部位とともにリン酸化軽鎖のC末端領域がミオシン機能調節に重要な領域であることを示唆している。化学架橋で得られたアミノ酸残基間相互作用がミオシン機能にどのような意義があるすかを知る目的で、変異ミオシンの研究を始めている。
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