昨年度行なった水槽内シミュレーション藻場におけるモエビ類三種(ホソモエビ、ツノモエビ、コシマガリモエビ)の個体間干渉型のかくれがをめぐる競争の観察結果は、夏期の結果のみであって、ホソモエビの短期世代とツノモエビ、コシマガリモエビの未成体の組み合わせの結果であった。今年度は、春期のホソモエビ長期世代とコシマガリモエビ成体の組み合わせでも同様な観察を行なった。その結果、個体間干渉の強度は、サイズ、季節の変化によって異なった結果となったが、捕食者の導入による干渉型競争の著しい低下としいう現象は共通してみられた。 二年間の実験結果、野外個体群の研究結果をふまえて、コシマガリモエビとホソモエビ2種のかくれがをめぐる競争についての数理モデルを講築した。かくれがの中の個体数をRn、かくれがから外へ出ている個体数をQnとすると、種1と種2については、 dRn/dt=(-μn_2R_1+μn_2R_2)Rn+VnQn-JRnRn dQn/dt=(μn_1R_1+μn_2R_2)Rn-VnQn-(KnP+Jqn)Rn となる。μijは競争係数であり、捕食者の存否によって変化する。モデルの計算結果は、両種のリクルート率の平面上で2種の共存.領域が自然死亡率の大きい条件下においては、捕食者の存在によって大きく拡大され、いわゆる“predator-mediatedcoexistence"があることを明らかにすることができた。
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