好アルカリ性細菌Bacillus yn-1には2種類のチトクロム二酸化酵素が存在し、各酵素はこの細菌の生育段階によりその発現程度が異なることがわかった。チトクロムc酸化酵素のうち、1つはcaa_3型酵素で1分子中に2分子のヘムoと1分子のヘムcをもち、この細菌の全生育過程の細胞に存在する。こう1つの酵素はcal型で、1分子中にヘムa、ヘムc、ヘムoを各1分子をもつ。ヘムaをもつのにチトクロムa_3をもたないという大変珍しい酵素である。この酵素はヘムoをもつのでO_2に対する親和性がcaa_3型酵素より大であり、細菌の生育の後期なって生成される。caa_3型酵素、cao型酵素ともにウマチトクロムcの還之型を酸化する。なお、他のアルカリ性細菌Bacillus yn-2000からはチトクロムcaoのみが得られるので、好アルカリ性細菌ではチトクロムcaoが生成されやすいのかもしれない。caa_3型およびaco型の2種類の酵素はタンパク質部分が異なり、単にチトクロムcaa_3の1分子のヘムaで置き換わるとチトクロムcaoになるというものではないことがわかった。生育段階の初期には細菌数が少ないので利用できるO_2は十分にあるが、生育の後期になると細菌数が増加して利用できるO_2が少なくなるのでO_2に対する親和性の高いチトクロムcaoが発現すると考えられる。ヘムoはこの細菌の生育初期から多量に存在するので、チトクロムcaa_3からacoへの変換はヘムの合成の変換ではなくタンパク質部分の合成によって調節されていることがわかった。
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