研究概要 |
(Na,K)ATPアーゼ、(H,K)ATPアーゼはともに相同性の高い2種のサプユニット(α鎖、β鎖)から構築されているが、β鎖の機能につては不明な点が多い。そこでβ鎖の機能せ以下の観点から検討した。 1.特異的変異導入による(-S-S-)結合の切断 β鎖には保存性の非常に高い3本の(-S-S-)結合が存在する。量盛N-末端に近い(-S-S-)結合に変異を導入して切断しても安定なαβ複合体が形成されたが、他の2つの(-S-S-)結合の場合は変異β鎖はα鎖と会合できなかった。しかしこの安定な複会体も機能(ATP分解活性)を欠いていた。 (H,K)ATPアーゼのβ鎖と(Na,K)ATPアーゼのα鎖とは安定な複合体せ形成するが機能的ではない。両β鎖間で最も相同性の低いのは最もN-末端側(-S-S-)結合ループ内のアミノ酸配列であり、これらの結果から判断して、このループが両ATPアーゼが機能的であるための特異的領域である可能性を指摘できた。そこでこの可能性を検証するために両β鎖間のキメラ体を構築した。 2.(Na,K)ATPアーゼ、(H,K)ATPアーゼβ鎖間のキメラ体の構築両β鎖ともにほぼ3等分する位置に制限酵素部位を導入し、それらの部位で互いに入れ換えたえたキメラ体を構築した。現在これらキメラ体のα鎖安定化能や、生成したαβ複合体のATP分解活性やイオン輸送活性等を検討中である。さらにこれらキメラ体で興味あることは、両酵素の細胞膜内局在性【(H,K)ATPアーゼはapical側に、(Na,K)ATPアーゼはbasolaterel側に局在】の解明の手がかりとして有効なことである。我はβ鎖がこれらATPアーゼの細胞内輸送で中心的役割を果たしているとの成績せ得ており、これらキメラ体とα鎖との複合体の挙動を共焦点顕微鏡で追跡することによりこの門題に接近できると考えている。
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