脳老化と神経栄養因子

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04268103
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 畠中 寛 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (60208519)
• 研究分担者: 高坂 新一 国立精神, 神経センター・神経研究所, 部長 (50112686) ; 小池 達郎 北海道大学, 理学部, 教授 (80128131) ; 加藤 泰治 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (60094364) ; 塩坂 貞夫 奈良先端科学技術大学院大学, 教授 (90127233) ; 三木 直正 大阪大学, 医学部, 教授 (40094445)
• キーワード: アルツハイマー病 / 神経栄養因子 / 成長抑制因子 / 細胞生存維持 / 神経細胞死 / 細胞内カルシウム

研究概要

本研究は、主としてアルツハイマー病を中心的課題として取り上げ、老年痴呆の分子機構にアプローチしようとするものである。全三班の中で、本研究班は主要研究目的として神経栄養因子を取り上げ、この蛋白質群の神経細胞の生存と機能維持の細胞生物学的意義を明らかにすることから、神経細胞変性と死のメカニズムを解明しようと考えた。その結果、(1)神経成長因子(NGF)およびそのファミリー蛋白質ならびにその他の神経栄養因子による神経細胞の生存を測定できるユニークなアッセイ系として生後ラット中枢神経細胞の培養法が完成した。(2)NGFと繊維芽細胞増殖因子の高感度酵素免疫測定法の開発を終えている。また、NGFおよびそのファミリー蛋白質のmRNAの定量的測定が可能である。加えて、NGFファミリー蛋白質の高親和性および低親和性レセプターの定量法も確立できた。(3)脳よりのミクログリア細胞の培養系の確立と、各種グリア細胞の選択的培養を可能とし、これらグリア細胞系を用いて神経栄養因子活性をもつ新しい蛋白質画分の精製に成功した。(4)神経細胞の神経栄養因子依存性の生存維持と細胞内カルシウムの関連を明らかにし、細胞生存ウインドー仮説を提唱した。(5)アルツハイマー病脳で特異的発現が減少する新しい因子蛋白質、成長抑制因子(GIF)のクローニングに成功し、分子構造を解明した。またその特異抗体の作製に成功した。(6)新しい神経突起伸展因子の構造を決定しており、さらにそのレセプターのクローニングに成功した。(7)培養大脳蛋白質および海馬神経細胞間のシナプス形成を、機能と形態の両面から、定量的に解析できる系を完成させた。

研究成果

• [文献書誌] Y.Enokido,& H.Hatanaka: "Apoptotic cell death occurs in hippocampal neurons cultured in a high oxygen atmosphere." Neurosci.57. 965-972 (1993)
• [文献書誌] Y.Akaneya,Y.Enokido,M.Takahashi & H.Hatanaka: "In vitro model of hypoxia:Basic fibroblast growth factor can rescue cultured CNS neurons from oxygen-deprived cell death." J.Cereb.Blood Flow Metab.13. 1029-1032 (1993)
• [文献書誌] Y.Akaneya,M.Takahashi,H.Tsukui & H.Hatanaka: "Enhancement of choline acetyltransferase activity in coculture of rat septal and hippocampal nourons." Brain Res.(印刷中). (1994)
• [文献書誌] M.Yamada & H.Hatanaka: "Interleukin-6 protects cultured rat hippocampal neurons against glutamate-induced cell death." Brain Res.(印刷中). (1994)
• [文献書誌] Y.Akaneya,M.Takahashi & H.Hatanaka: "Death of cultured postnatal rat CNS neurons by in vitro hypoxia with special reference to N-methyl-D-aspartate-related toxicity." Neurosci.Res.(印刷中). (1994)
• [文献書誌] M.Kojima,T.Ikeuchi & H.Hatanaka: "Nerve growth factor induces trkA mRNA expression in cultured basal forebrain cholinergic neurons from 17-day fetal rats." Neurosci.Lett.(印刷中). (1994)
• [文献書誌] Y.Enokido,T.Yonemasu,T.Kubo,M.Ichikawa & H.Hatanaka: ""Recent Developments of Alzheimer's and Parkinson's Diseases" eds by I.Hanin,M.Yoshida and A.Fisher,Plenum Press" Oxygen toxicity induces apoptotic neuronal in cultured rat hippocampal neurons.(印刷中), (1994)