研究概要 |
1.エイズ患者のリンパ装置の変化についてこれを詳細に観察し、1)病変の進行した感染者のリンパ節においてはHIVを多量に保持したFDCがリンパ節外に遊出することがあること、2)エイズリンパ腫においては腫瘍細胞膜に存在する免疫グロブリンを介したシグナル伝達が抑制されていること、3)エイズリンパ腫の発生母池となりうるEBウイルス感染細胞がリンパ腫発症の前にすでに患者リンパ装置に多量に存在している症例がすくなくないことを認めた。 2.HIVの外膜糖蛋白gp120は、感染に際して宿主細胞膜蛋白とV3loopで結合する。今回、単球由来細胞のV3BPの特性を検討した。細胞膜蛋白を可溶化し、3種類の異なるウイルスストレイン由来V3loopを用いて作製したアフィニティーカラムで精製すると、33kDa,32kDaの2本のバンドが検出された。本精製蛋白を更にSEC3000を用いて分子ふるいにて精製し、33、32kDaの蛋白は130kDaの分子量を持つことが明かになった。 3.HIV感染細胞の致死のモデルと考えられるHIV-env発現細胞株を用いて致死機序について検討した。gp160/CD4複合体はアポートシスを誘導して細胞を死に到らしめるが、そのシグナル伝達にはチロシンキナーゼ、カルモジュリンを介した核内Ca^<2+>の上昇の関与が示唆された。 4.エイズ患者におけるCD8を主体とした細胞性免疫応答を、エピトープぺプチドのみを用いて予めあるいは感染後賦活させる方法を検討したところ、ペプチドを結合させた同系の樹状細胞に2,200-3,300radの放射線照射を与え免疫系に認識され易くしたものを静脈投与した場合、僅か一回の実施によって少なくとも6ケ月にわたり、効率よくウイルス特異的なCD8陽性キラーT細胞が賦活されることを動物実験で見いだした。
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