「記憶に関連する遺伝子と神経細胞の同定」という課題で、C.elegansを用い、広汎な学習欠損株の分離を行った。記憶は学習によって獲得されるという考えから、学習の基本要因の1つ慣れ(habituation)異常変異体分離を試みた。その結果、5変異株を分離することに成功した。慣れは個体差が大きい。そのためより正確を期すため複数の学習実験系を確立した。これらの手段によって、5変異株の学習能を調ベ、何れの規準によっても慣れ(habituation)の欠損株であることを確認した。現在これら変異株の遺伝子座決定を行っている。 学習には特定の回路網が関与している。同定された遺伝子変異はこうした回路決定に役立つ。記憶はおそらく特定回路での神経統合によってなされる。神経回路網が働く最小単位はシナプスである。従って統合機構の解明には、シナプス伝達を明らかにする必要がある。そのため、学習異常変異体の解析と並行して神経ー筋肉系でのシナプス伝達をとる上げた。これに関与する複数の遺伝子を同定した。そのうち1つの遺伝子をクローニングし、その遺伝子産物の分子性状を明らかにした。その結果、この遺伝子がシナプスでのアセチルコリンの放出に関与していることを明らかにした。これらの成果は、次の論文として発表した。
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