我々は、抗体遺伝子のVDJ-組換えシグナルに結合する蛋白質をコードするマウスRBP-Jκ遺伝子の機能を解析するため、ショウジョウバエの相同遺伝子をクローニングしその突然変異体の検索した。その結果、ショウジョウバエのRBP-Jk遺伝子がSuppressor of Hairlessとして知られていた遺伝子であることを発見した。Suppressor of HailessはHairless遺伝子とantagonisticに作用してショウジヨウバエの末梢神経の発生を制御する遺伝子である。 この結果に基づきRBP-Jκ蛋白質のDNA結合の特異性を再検討した結果、最も強い結合を示す配列なCACTGTGGGAACで、これはショウジョウバエのneurogenic geneの一つである。Enhancer of Split遺伝子群中のm8遺伝子のプロモーター部分に存在する配列であった。Enhancer of SplitはHairless遺伝子やSuppressor of Hairless遺伝子のターゲットの候補と考えられる遺伝子であり、この結果はRBP-JκがEnhancer of Splitの発現を直接制御している可能性を示唆している。m8遺伝子のプロモーター部分をCAT遺伝子につないだプラスミッドを作成し、RBP-Jκの発現ベクターとともにショウジョウバエの培養細胞に導入することで、RBP-Jκ蛋白質による転写活性調節を検討中である。 Heat shockプロモーターの下流にRBP-JκのcDNAをつなぎハエに導入し、種々のステージで熱ショックをかけて過剰発現による影響を検討した。幼虫の後期からpupa形成直後に熱処理すると剛毛の形成が阻害された。pupa形成後12-16時間後に熱処理するとdouble socketや異常なshaftの形成が観察された。したがって、RBP-Jκは末梢神経系の発生の2つの異なるステージで機能していることが明らかになった。
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