形態が異常な変異のうち、腸と体壁の間の隙間のできる幼虫致死変異(以下、c1r-1様変異と呼ぶ。昨年度までに10株を分離している。)にシグナル伝達関係の変異が多く含まれることがわかったので、このような変異の分離と解析を集中して行った。本年度にメタンスルホン酸エチルにより変異を誘起して新たに得られたc1r-1様幼虫致死変異株4株のうち、3株は昨年度までにミューテーター株から得らりていた未知の遺伝子の変異と同じ遺伝子にあるらしい。このことから、c1r-1様変異の遺伝子数はそれほど多くなく、20〜30程度であることが予想される。本年度はこの他に、「一部の個体がc1r-1様表現型を示して死ぬが、他の個体は成長・増殖するような変異株」の分離・解析をおこなった。得られた7株のうち2株(既知の遺伝子vab-2、vab-3にあるらしい)は頭部の形態、4株は頭部の運動に異常があった。このことから、c1r-1様表現型は頭部の異常に起因するかもしれないと考え、現存、c1r-1様変異株の幼虫致死の個体について頭部の細胞の数・位置の異常を探している。また、幼虫致死異体株のうち適当なバランサー染色体と選択マーカーがある位置に存在する変異に関しては、復帰変異を得るための方法を考案し、現在、一部の形態異常幼虫致死変異について復帰復異を分離中である。 形態形成のうち、神経回路網の形成は特に興味のある問題なので、神経回路網の形成に異常のある変異を迅速に同定するための細胞マーカーを、プロモータートラッピング法(lacZ遺伝子の上流にC.elegansゲノDNA断片をランダムに融合したものを遺伝子導入する)により作成することを始めた。
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