発生過程におけるショウジョウバエmyb遺伝子産物(D-Myb)の発現を抗体染色により解析した結果、卵黄内核分裂期の核で最初に発現が観察され、次いで、多核性胞胚期に形成される卵後極の極細胞においても発現が認められた。この極細胞での発現は、dorsal plate 陥入後、一時的に消失する。さらに、細胞性胞胚期の体細胞での発現が非常に強くなることが明らかになった。体細胞でのD-Mybの発現はステージ12の短縮胚の段階まで持続した。受精後、10時間経過した胚の腹部側に腹部神経索と呼ばれる神経組織が形成されるが、D-Mybはこの部位で発現が見られた。同時に、この時期の生殖巣に存在する始原生殖細胞で再び、D-Mybの発現が見られる。このようにD-Mybの発現が極細胞や神経系の細胞で観察されることは、D-mybが未分化生殖細胞の増殖・分化あるいは、神経細胞の分化に関与している可能性を示唆している。現在、P因子挿入によるmyb変異体を分離する試み、及び正常D-MybやD-Myb dominant negative formを過剰発現する個体を作出する試みを行なっている。これまでにX染色体へのP因子挿入により致死となる変異体の中から、β-galの発現パターンがD-Mybと一致するものをいくつか選び、P因子挿入部位の遺伝子クローニングを行ないつつある。またこれらの実験に使用するためのD-myb遺伝子の5'-転写調節領域を同定・解析したところ、AT-richなputativeホメオ蛋白質結合部位などの存在が明らかになった。
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