抗体の作製が遅れたので、予定していたサブユニット結合部位の解析の代りに、次年度以降に計画していたβ-サブユニット蛋白質の機能領域の解析を開始した。また、新たに宿主因子HF-Iの細胞内機能を検討した。 1、抗体の作製:プラスミドpSP18にHF-I遺伝子をクローニングして、同蛋白質を菌体内で大量に産生した。DEAEカラムで精製した後、同蛋白質をウサギに免疫して抗HF-I抗体を得た。一方、プラスミドpMALにβ-サブユニット遺伝子をクローニングして、マルトース結合蛋白質(MBP)との融合蛋白質を菌体内で産生した。アミロースカラムで分離した後、プロテアーゼXaでMBPを切断してβ-サブユニット蛋白質を単離した。現在、抗β-サブユニット抗体を作製中である。 2、Qβレプリカーゼ結合都位(S-部位)の構造的特微の解析:S一部位と下流の外被遺伝子領域をM13ファージにクローニングした。しかしながらS一部位に変異があると、変異体レプリカーゼ非産生菌においてもファージ感染後の外被蛋白質合成が起きず、この領域はリボソームの認織に関与していることが推察された。 3、β-サブユニット蛋白質の機能領域の解折:変異体レプリカーゼ産生菌の溶菌液を用いて、MDV-1RNAやポリ(C)を鋳型とした試験管内RNA合成を調べた。その結果、保存表列GDD中のグリシン残基は、マグネシウムイオンに依存した触媒活性に関与していることが示唆された。 4、宿主因子HF-Iの細胞内生理機能の検討:1で作製した抗HF-I抗体を用いて、同蛋白質の生合成および細胞内分布を調べた。その結果、HF-IはRNAポリメラーゼと同様の生合成制御をうけること、また、主としてリボソーム分画に存在することから、細胞増殖に必須で蛋白生合成に関わる因子であることが推察された。
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