研究分担者 |
田仲 可昌 筑波大学, 生物科学系, 教授 (80091908)
大澤 省三 生命誌研究館, 顧問 (10034620)
菊池 洋 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (40273320)
隈 啓一 京都大学, 理学部, 助手 (10221938)
村田 茂範 東京工業大学, 生命理工学部, 教務職員
|
研究概要 |
当研究班では,RNAワールドの概念に基づき,RNAの起源と進化に焦点をあてて,RNA機能構造の成立機構を明らかにすることを目的とした.そのため,(1)RNAワールドにおいて機能していたと考えられるRNAに関して,現存するリボザイムの構造と反応機構の解明,ならびに,新しい機能を付与したRNAのSELEX法による創出,の二つの視点から研究を試みるとともに,(2)RNAワールド成立後に,特にタンパク質生合成に関わるRNAおよびタンパク質が,構造と機能を進化させてきたプロセスをたどることにより,RNAワールドにおける実体に迫ることを試みた.その成果は, (1)RNasePの構成成分であるM1RNAをもとに,新規の自己切断RNAを構築することによって,リボザイム機能の詳細を明らかにした.RNAワールドにおいて重要な反応と想定されるライゲーション反応が,RNAのみで自発的に行われることを発見した.SELEX法により,様々な機能性RNA分子を創出することに成功し,それらがRNAワールドにおいて果たしていたと考えられる役割について議論することができた. (2)tRNAのアイデンティティー決定機構を,大腸菌,酵母などの生物種について生化学的な手法と遺伝学的な手法を組み合わせることにより,ほぼ完全に解明した.アミノアシルtRNA合成酵素については,ヒトの遺伝子の大半をクローニングすることに成功した.そして,古細菌,真核生物,真正細菌の酵素の系統関係に基づいて,起源を明らかにした.生物種間などでの水平伝搬が起こったことが示唆された.以上により,tRNAとアミノアシルtRNA合成酵素の進化過程を知ることができた.他方,古細菌tRNAに広く存在するアーケオシンという修飾ヌクレオシドが,真正細菌や真核生物において別の機能を担うキューオシンと同様の塩基交換反応によって生合成されるということを明らかにした.
|