研究概要 |
遺伝子発現の転写後調節をつかさどるRNAシグナルの構造・機能・制御タンパク質との相互作用を明かにする目的で行なった研究成果を以下に整理する。 1.リジルtRNA合成酵素遺伝子の研究:大腸菌の誘導型lysU遺伝子の発現機構解析の結果、lysU遺伝子はLrp蛋白質によって転写レベルで抑制されており、ロイシンを含めた各種の誘導物質によるLrp蛋白質の不活化を介して転写誘導されることを明かにした。さらにlysU遺伝子翻訳開始コドン直下に"downstream box"と命名された翻訳エンハンサーの存在を明かにした。 2.RNA2重鎖認識酵素RNaseIII及び関連因子の研究:era遺伝子はRAS遺伝子ホモログとして発見されたが、その機能を解くために高温致死性era変異のサプレッサー変異を3種類(ersA,B,C)分離し、解析した。その結果、ersAはsuhB遺伝子と同一であった。さらに低温致死性変異suhB10を分離し、そのサプレッサー変異を分離、解析した結果、SuhB蛋白質の機能欠損は2重鎖RNA認識(切断)酵素であるRNaseIIIの特異的な変異によって補償されることが明かになった。 3.ペプチド鎖解離因子変異の研究:大腸菌では、終止コドンUGAにおける翻訳終結はRF2を必要とする。我々はin vivoでRF2と相互作用している因子の関する知見を得るこてを目的として高温感受性RF2変異株から6種類の復帰変異株を分離した。その内、4株が遺伝子外サプレッサー変異であった。それらは、90.0分(srbB)と99.5分(srbA)の2つのグループの分けられ、それらの一つは未だ分離されていない第3の解離因子の可能性がある。
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