ColIb-P9プラスミドの複製開始蛋白質をコードするrepz遺伝子の翻訳開始はmRNA分子内で一過的なRNAシュードノットと呼ばれる構造の形成に依存している。一方、シュードノットの形成はアンチセンスRNA(IncRNA)の作用により阻害される。これら二つのRNA-RNA相互作用には特異なGGCG配列が関与しており、それ故、この配列を含むRNAの高次構造を明らかにすることはシュードノット形成を理解するために要重である。本研究ではGGCGを含む6塩基のUUGGCG配列によって構成させるRNAの二次構造を解析し、それがRNA-RNA相互作用のためのユニークな機能構造モチーフであることを見いだした。UUGGCG配列は構造-Iと名付けたステム・ループ構造内に存在するが、塩基置換によりシュードノット形成能、IncRNA活性能、あるいは両者の活性が低下した様々な突然変異を分離し、その二次構造をRNaseの切断パターンの変化を指標として解析した。その結果、6塩基のうち、UGGCの4塩基は構造-Iのループ部分に対応していることが明らかとなった。次いで、IncRNA-mRNAハイブリッドの動態から構造-Iを構成する塩基には、G:C>A:U>G:U>A:Cのルールに従って安定な複合体を形成するものと、このルールに従わないものとに区分できることを見いだし、前者にはシュードノッフ形成に関与するGGCGの各塩基が属することも明かとなった。これらの事実はシュードノットの形成とIncRNA-mRNA分子間互作用が互いに共通なRNA構造モチーフを介して行われていることを強く示唆しており、極めて興味深い。
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