三種類の長いv-armを持ったclassIItRNAすなわち、tRNA^<Ser>、tRNA^<Leu>、tRNA^<Tyr>の中から、各々のアミノアシル-tRNA合成酵素が対応するtRNAだけを間違いなく認識する仕組みを明らかにするために、数多くの大腸菌classIItRNA転写産物の変異体を作製した。その結果tRNA^<Ser>はG2およびv-armが、tRNA^<Leu>はA14とdiscriminator塩基A73が、tRNA^<Tyr>はアンチコドン2文字目とdiscriminator塩基A73がそれぞれのアルノアシル-tRNA合成酵素の認識部位として機能していることが明らかになった。このことに加えて、立体構造の違いがこれら3種類のtRNAの識別に対してきわめて重要な働きをしていることが以下の実験結果から示唆された。まず、tRNA^<Tyr>はv-armにステムの組み方を変えるように合計3塩基挿入することに加え、それ自身はSerRSに直接認識されてはいないものの、tRNAのL字型構造の形成に関与していると考えられる9位と20位の塩基を変えることにより、充分なセリン受容活性を持つようになった。そして、SerRSによるv-armの認識が非塩基特異的であることも明らかになった。一方、tRNA^<Ser>、tRNA^<Tyr>ともに、(tRNA^<Ser>に関しては、G73からA73の変換に加えて)、Dループ中のG18G19の位置の変換、v-armのステムの組み方の変換、そしてLeuRSの認識に必要であると考えられる塩基A14にスタッキングしている15-48の塩基対を変換することにより、アミノ酸受容特異性がロイシンへと変換した。さらに、tRNA^<Leu>からtRNA^<Ser>への変換にはこの3つのL字構造に関わる要素の変換に加えて、15-48塩基対にスタッキングしている59位の塩基の変換をも必要とした。以上のように立体構造の違いに大きく依存するclassIItRNAにおける識別は、これまで知られているclassItRNAにおける識別がアンチコドンやdiscriminator塩基をはじめとした塩基特異的な認識い大きく依存していることと極めて対照的であることが判明した。
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