1.methionine sulfoximine(MSO、1mM)をタバコの葉切片に与えて、光を照射すると、強光下では2日ほどで、葉は白変し、細胞は死滅した。与えても暗黒においたものや、水対照区のものは、もとのまま緑色のままであった。MSOを弱光下でも、低温では、約一週間でMSO処理区のタバコ葉切片は白変化した。これは、MSO処理によりGS2活性が阻害され、光呼吸経路が回転しなくなり、その結果、photoinhibitionの状態が続き、活性酸素の消去系のみでは、活性酸習を消去しきれくなった、ためと解釈できる。 2.MSOの存在しない場合でも、強光下では除々にアンモニアが蓄積し、3日ほどで、タバコ葉切片は白変化した。これは、その葉片中のGS2活性が、光強度に対して十分に高くなく制限となっており、したがって、光呼吸経路が十分には回転できず、上記1と同じ現象が進行した、と解釈できる。 3.上記タバコ葉切片の白変化に先立ち、強光下では、アンモニアの蓄積、photoinhibition、タンパク質量の減少、が観察された。 4.イネGS2cDNAを35Sプロモーターにつなぎ、Tiベクターを用いて、タバコに遺伝子導入した。得られた10数個の形質転換タバコのクローンについて、レタスGS抗体を用いてWesternを行うと、GS2の発現量は、対照区の約2倍に増加したもの、ほとんど変化のないもの、むしろ減少しているもの、が得られた。GS2の発現量が対照区の2倍に増加したタバコについて、強光下での光障害の受けやすさ、を比較すると、明らかに対照区よりも光障害の出るのが遅れることが観察された。したがって、GS2の発現量を増加させると、光呼吸能が高まり、その結果光障害を受けにくくなることは、少なくとも、ある範囲内において成立する現象であることが確認できた。
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