研究概要 |
(1)酸化側の光傷害:At-バンド成分の光損傷の機構を調べる為,酸素及び電子伝達阻害剤(DCMU)の効果を調べた。これらの条件下ではAtバンド成分の光損傷は起こらなかった。At-バンド成分が完全に損傷を受ける条件でも光化学系IIの他の反応はほとんど影響を受けない事を考慮すると、At-バンド成分はクロロフィルの励起3重項を介して生成した1重項酸素により破壊されるのではなく,酸化状態のAt-バンド成分が酸素と反応することにより直接破壊されると推定した。小麦葉断をNH_2OH処理後、光照射すると系II酸化側が光傷害を受け、弱光下でインキュベートする事により傷害の回復が起こった。この時、光活性化能で見た酸化剤の損傷とその回復過程はAt-バンド成分の阻害、回復過程と良く一致していた。 (2)還元側の光傷害:系II還元側の光傷害の初発過程におけるOaキノンの阻傷をFJ-IR(フーリエ変換赤外分光)、熱発光で調べた。Qaセミキノンアニオン生成を、プラストキノン分子のCO伸縮に由来するバンド(1478cm^<-1>)をマーカーとして測定した。系II標品における酸素発生の阻害過程は1478cm^<-1>バンドの消滅と同じTimeコースを示し、Qaセミキノンアニオン生成の阻害が光傷害による酸素発生活性阻害の原因である事を強く示唆する結果を事が出来た。又,熱発光の測定より、光照射の初期にQb部位からキノン分子が脱落する事がわかった。従って光傷害過程ではまずQb部位よりキノン分子が脱落、続いてQa部位よりキノン分子が不可逆的にはずれ、酸素発生活性の阻害が起こると推定した。
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