研究課題
1960年代以降の芸術の動向を、電子的な媒体による映像の量産に起因する問題として検討するために図書資料を購入し、そこから各分担において画像資料を収集・整理して、現代芸術の動向に関する画像データベースを作成した。さらに、現代デザインの変貌をもたらした社会的要因をテレビジョンに代表される電子的な情報革命にあるとして、とくに映像メディアにおける画像の多様な現実に着目しながら、現代芸術の動向との関係性をふまえたうえで、各分担における文献、および画像資料を収集し、現代デザインに関する画像データベースを作成した。こうした作業の過程で、電子的な情報革命の進行による高度情報化社会の到来は、大衆の時代を招来させる方向へと展開し、高級文化と通俗的文化の優位性の転換、さらには両者の交流といった側面が1950年代以降の文化的特徴として明らかになってきた。主として今世紀初頭の高級芸術の思想に基づいてきた近代デザイン理念は、生活に場をもつ大衆文化の日常性とのずれによって大きな転換を余儀なくされる。近代デザインの理念と現代デザインの状況をめぐる差異もまた、大衆文化の隆盛による日常性の復権に大きな要因があることが明らかになった。こうした構造は、日常生活の場を成立基盤とする、芸術的、社会的活動としてのデザインの本質からして必然的であるといえるだろう。この画像データベースは、光磁気ディスクに保存された画像ファイルをコンピュータによって制御するシステムであるが、今後もデータベースの実用性と汎用性を高めるために、データベースの領域および目的をより明確にしながら、資料としての充実化を継続する必要がある。