研究課題
1960年代以降の現代芸術および現代デザインの動向を、電子的な媒体による映像の量産に起因する問題として検討するために、平成4年度は各分担者が図書資料を購入し、そこから一部の研究者は関係分野において画像資料を収集・整理して、現代芸術および現代デザインの動向に関する図像データベースを作成した。平成5年度は以上のデータベースに基づいて、4回の検討会を開催して、各自分担テーマについて研究発表を行い、討議を重ねた。その結果は報告書にあるとおりであるが、いまその概略を述べるに、吉積はとくに60年代以降のメディア・アートの展開を詳細に検討して、メディア映像を日常性のレベルにおける芸術意識の回帰現象としてとらえようとしている。藪は近代デザイン史のさまざまな思潮の流れを詳述することから出発して、製品のデザインの展開と広告イメージの展開との平行現象と齟齬の現象について検討し、デザイン史の理念の再検討が必要であることを主張している。渡辺は製品における形態の意味作用と製品の意味作用を包括的構造的にとらえようとしている。製品においてはその機能が消費されるだけでなく、それが所有するイメージもまた消費されること、そのような現代社会の構造にデザインと芸術とが共有する共通の側面があることを指摘している。羽生はこのような現象を装飾の観点から捉えなおし、それによって近代デザインでは欠落していた装飾の新しい意味と役割を見出している。水野と豊原はそれぞれ映像デザインとメディア・アートの現代的な特徴を明らかにすることによって逆にデザインの現象に光をあてようとしている。伊藤は静止画像である現代写真を検討しながら、動画像とのかかわり、さらにはデザインとの関係を考察している。最後にこれらの全体現象の持つ意味を宮島が総括した。
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