研究課題
総合研究(A)
本研究は、平成元年度に告示された学習指導要領がどのような行政的対応と学校の組織的対応を経て各学校の教育課程として定着していったかを、二年間にわたる追跡調査を元に明らかにしたものである。初年度は、各都道府県及び全国からサンプリングした市町村教育委員会に対して、質問紙調査を行った。2年目は、前年実施した教育委員会調査をパターン分類し、その結果を元に15府県を抽出し、学校調査を行った。学校調査は、小学校に対しては、平成4年度の教育課程編成の校内過程や各校での生活科導入の実態を尋ねる学校調査(各校1部)と、教育課程や学校の組織風土に関する教員への調査(各校6部)からなる。また、中学校に対しても、選択履修の幅の拡大等を加えた同様の調査を行った。知見として以下の5つが挙げられる。1 都道府県教育委員会調査の回答を数量化III類によって分析したところ、「活動性」「学校指向-市町村教委指向」の2軸が抽出された。この分析を元にクラスター分析を行い、都道府県教委の指導行政を5つのパターンに分類した。2 新学習指導要領の中で教育委員会が重視する事項は、抽象的な項目であるのに対し、教育課程編成の際に学校で重視されているのは、具体的・技術的な事項である。3 教育委員会の指導は、大綱的な面では学校に影響を与えているが、実際の教育課程編成については、自校の過去の経験や慣例に従う傾向が強い。4 教員は、技術的な事項よりもむしろ教育委員会の回答で多かった抽象的事項を重視する傾向が強い。5 学校全体として、自校の教育課程の問題点として、教科間の時間の配分や選択教科の扱いの調整が問題であると考えられているのに比べ、教員は新学習指導要領の理念への適合を問題にする傾向が強い。
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