研究課題/領域番号 |
04301033
|
研究機関 | 国立教育研究所 |
研究代表者 |
井上 星児 国立教育研究所, 企画調整部, 企画調整官 (70223253)
|
研究分担者 |
田中 敬文 東京学芸大学, 教育学部, 専任講師 (50236600)
島袋 勉 実践女子大学, 文学部, 教授 (30138185)
小林 亜子 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (90225491)
小野田 正利 長崎大学, 教育学部, 助教授 (60169349)
レヴィ・アルヴアレス ク 広島大学, 総合科学部, 助教授 (20205222)
|
キーワード | 日本 / フランス / エリート養成 / 文化資本 / 文化的再生産 / 名門 / 東京大学 / 進路指導 |
研究概要 |
1.〔経済的出自〕収集した全国の国公私大60校、延べ123冊の学生生活実態調査報告書の集計結果では、一般に「都市圏大学」と「地方大学」との二極分化が著しい。また、東大と京大の学生のそれは。慶大を除く国・私立全大学を上回り、両大学が日本の大学の中でも特異な位置を占めることがわかる。また、いわゆる「5%の名門校」に属する東大・広島大・早大・慶大を例にとってみると、東大・早大・慶大の「都市圏」3校の豊かさが際立つ。育英会奨学金の受給率を見ても、4大学とも国立平均30%、私立平均19%を下回っているが、「受けたくない、必要ない」者が東大・早大・慶大は60%程度もいるのに、広島大は40%に止まっている。 フランスについては、経済的な階層差が単に大学進学機会のみならず、「学部専門領域」にも「達成される教育水準」にも現れ、労働者の子女は文・理系に高く(11%)、法経系(8%)、医歯系(4%)の順に低くなっていき(注;上級幹部層の子女はこの逆の分布)、またレベル別では大学院では6%(上級幹部層なら31%)しかいない。社会階層差はまた、学生の在籍する大学の地域的偏差までをも生み出している。上層=〔パリ+地方の富裕な大都市/医学・法学専攻〕、下層=〔豊かでない地方/文系学部専攻〕といった特徴づけが可能である。 2.〔文化的成育環境〕東大、およびそこへの合格者輩出度の高い東京の有名私立進学高校での調査結果を見てみると、小学校時代からのいわゆる「お稽古ごと」の経験率(およびそれへの親の積極的な支援率)が非常に高いことが目につく(学習塾・予備校等の経験率は一般の大学の学生たちの平均値と差がないのに反し)。また、東大に入学しえた要因として自分が認知するものの第1位は「在籍校の生徒のレベルや教師陣の指導力」(51%)、次いで「自分の全く個人的な学習努力の結果」(55%)、「家庭の日常的生活における知的・文化的雰囲気」(39%)、「塾・予備校等の受験産業の力」(29%)、と続き、最低は「親からの知能面での遺伝的要因」(10%)であった。フランスについては、対応する調査データは得られなかった。 3.〔学校の制度やカリキュラムの影響〕フランスの中等学校の「学校評議会」への生徒代表の参加や、高校3年での「哲学」教科の全員必修はわが国にはないもので、それが同国の質の高い「エリート文化」の形成に寄与していることは否めない。しかし反面、「学校への不満度」は先進国中、日・仏が最も高く、しかも仏では「進路指導の不適切」を挙げる者が33%と最も多い(日本は17%)。「エリート以外」の生徒たちにとって、仏の学校システムは相当に厳しいものがあるようにも思われる。
|